この記事で解決できる悩み
- 職場やプライベートで苦手な人がいて、どう接すればいいか分からない。
- 苦手な人とのコミュニケーションがストレスで、できるだけ避けたいと感じている。
- 自分の意見を伝えたいが、相手を不快にさせずに反論する方法が知りたい。
- 嫌味や挑発を受けたときに感情的になってしまい、後で後悔することがある。
- 人間関係を円滑にし、ストレスなく過ごしたい。
はじめに|避けて通れない「苦手な人」との向き合い方
私たちの日常や職場には、どうしても「苦手だな」と感じる人がいるものです。
価値観の違い、性格の不一致、過去の経験など、理由は様々でしょう。
できれば関わりたくない、というのが本音かもしれません。
しかし、職場の上司や同僚、取引先、あるいは地域コミュニティのメンバーなど、関係性を完全に断つことが難しい相手もいます。
相手を避け続ける態度は、かえって関係をこじらせ、仕事や生活に支障をきたす原因にもなりかねません。
この記事では、苦手な相手とのコミュニケーションにおけるストレスを大幅に軽減し、状況を好転させるための具体的な3つのステップを、シーン別に解説します。
少し視点を変え、アプローチを工夫するだけで、驚くほど関係性が楽になることがあります。
ぜひ、明日からのコミュニケーションに役立ててください。
【ステップ1】関係改善の糸口を見つける:相手の「承認欲求」を満たすアプローチ
「苦手な相手との間にできてしまった壁を取り払い、関係を少しでも良くしたい」
そう考えるなら、まずはこちらから心を開き、相手を認める姿勢を示すことが重要です。
特に効果的なのが、相手の「承認欲求」や「自尊心」を満たす言葉を選ぶことです。
① 相手の得意分野を「頼る」
人は誰でも、自分の得意なことや詳しい分野について認められたり、頼られたりすると嬉しいものです。苦手な相手であっても、その感情は変わりません。
- 「〇〇さんはプログラムに非常にお詳しいと伺いました。基本的なことで恐縮なのですが、少し教えていただけませんか?」
- 「以前、△△のプロジェクトを成功させたと聞きました。その時の経験について、ぜひ参考にさせていただきたいのですが、ご相談に乗っていただけますでしょうか?」
このように、「教えてほしい」「相談に乗ってほしい」という形で相手の知識や経験を尊重する姿勢を見せることで、相手は「頼られている」「認められている」と感じ、心を開きやすくなります。
警戒心が解け、「先生」役としてコミュニケーションが円滑に進むきっかけになります。
② 相手の興味・関心事をリサーチし、会話のきっかけにする
相手が何に興味を持っているのか、どんなことが好きなのかを事前にリサーチしておくことも有効です。
共通の話題や、相手が熱く語れるテーマを見つけることで、自然な会話が生まれやすくなります。
- 「〇〇さん、最近△△(相手の趣味)を始められたそうですね!私も興味があるのですが、どんなところが面白いですか?」
- 「先日のプレゼン資料、非常に分かりやすかったです。特にあのグラフの作り方は、どういった点を工夫されたのですか?」
人は自分の好きなことや得意なことについて話すとき、自然と表情が和らぎ、饒舌になるものです。
会話が弾む中で、相手の意外な一面を知り、苦手意識が薄れていくことも少なくありません。
体験談:35歳・男性・会社員
以前、部署内に非常に気難しく、少し近寄りがたい先輩(男性・40代)がいました。
知識は豊富なのですが、言い方が厳しく、若者は皆、彼に報告や相談をするのをためらっていました。私もその一人で、正直できるだけ関わりたくないと思っていました。
しかし、あるプロジェクトでどうしても彼の専門知識が必要になり、意を決して相談に行くことに。
その際、事前に彼が熱心な釣り好きであることを同僚から聞いていたので、「〇〇さん、先日△△(地名)で大きな魚を釣られたそうですね!すごいですね!私も釣りに興味があるんですが、初心者向けのコツとかありますか?」と、仕事の話の前に切り出してみました。
すると、普段の厳しい表情が嘘のように和らぎ、「お、君も釣りやるのか!」と、釣りの話で予想外に盛り上がりました。
その流れで仕事の相談もスムーズに進み、以前よりも格段にコミュニケーションが取りやすくなりました。あの時、彼の「得意分野」に踏み込んでみて本当に良かったと感じています。
【ステップ2】対立を避けて意見を伝える|「イエス・アンド」話法
会議や打ち合わせで、多数派の意見や上司の考えに疑問を感じても、真っ向から「反対です」「それは違います」と否定するのは得策ではありません。
特に相手が目上の場合、反感を買ってしまい、かえって自分の意見が通りにくくなるだけでなく、人間関係に溝を作ってしまう可能性があります。
ここでは、相手の意見を尊重しつつ、自分の考えを効果的に伝えるための「イエス・アンド」話法をご紹介します。
① まずは「賛同」の意を示す(Yes)
自分の意見を述べる前に、まずは相手の意見や提案の一部でも良いので肯定的な側面を見つけ、賛同の意を示しましょう。
- 「〇〇部長がおっしゃるA案の△△という点は、非常に重要だと思います。」
- 「皆さんが懸念されているリスクについては、私も同感です。」
最初に肯定的なメッセージを伝えることで、相手は「自分の意見が受け入れられた」と感じ、安心感を覚えます。
これにより、その後の対話がスムーズに進みやすくなります。
② 疑問や提案を「質問形式」で付け加える(And)
賛同を示した後で、自分の意見や懸念点を 「提案」や「確認」という形で、質問形式で 切り出します。
- 「A案の△△という点は素晴らしいと思う一方で、もし〇〇のような状況が発生した場合、どのように対応するのが最善でしょうか?」
- 「皆さんのご意見に基本的に賛成なのですが、一点だけ確認させてください。この方法で進めた場合、△△のリスクはどのようにヘッジできるでしょうか?」
- 「〇〇という視点も加えると、さらに良くなる可能性があると思うのですが、いかがでしょうか?」
このように質問形式で伝えることで、「あなたの意見を否定しているわけではなく、より良くするために一緒に考えたい」という建設的な姿勢を示すことができます。
注意点!
あくまでも相手への敬意を払い、穏やかな口調で質問することが重要です。
問い詰めるような口調になったり、執拗に質問を繰り返したりすると、かえって相手を不快にさせてしまう可能性があるため、タイミングや頻度には注意しましょう。
体験談:35歳・男性・会社員
ある重要な会議で、上司(男性・50代)が新しい業務フローの導入を提案しました。
効率化が目的でしたが、私には現場の負担が増える懸念点が見えていました。
しかし、上司はかなり乗り気で、他のメンバーも明確な反対意見を言えない雰囲気でした。
そこで私は、「部長、新しいフローによる効率化の視点、素晴らしいと思います。特に〇〇の部分は、現状の課題を解決する上で非常に有効ですね。(Yes)」とまず賛同の意を示しました。
その上で、「ただ1点、現場の担当者にとっては、△△の作業が増える可能性も考えられるかと思います。この点について、何かサポート体制や、他の作業との調整など、具体的なイメージがあれば教えていただけますでしょうか?(And)」と質問形式で懸念を伝えました。
結果的に、上司もその視点に気づいていなかったようで、「なるほど、確かにその点は考慮が必要だな。少し持ち帰って検討しよう」となり、一方的な導入は避けられました。頭ごなしに否定せず、まず受け止める姿勢を示したのが良かったのだと思います。
【ステップ3】挑発に乗らない冷静さを保つ|感情コントロール術
時には、理不尽な批判、嫌味、あるいは感情的な罵倒など、心をかき乱されるような言葉を投げかけられる場面もあるでしょう。
カッと頭に血が上り、言い返したくなるのは自然な反応です。
しかし、そこで感情的に反応してしまうと、相手の思うツボ。不毛な争いに発展し、さらにストレスを溜め込むことになりかねません。
ここでは、挑発的な相手に対して冷静さを保ち、受け流すための「感情コントロール術」をご紹介します。
① 「身体」をリラックスさせる|体感コントロール
怒りや緊張を感じると、体は無意識にこわばります。
まずは意識的に身体の力を抜き、リラックスさせることで、心の平穏を取り戻しやすくします。
- 深呼吸をする
ゆっくりと鼻から息を吸い、口から長く吐き出す。
これを数回繰り返すだけで、心拍数が落ち着き、冷静さを取り戻す助けになります。 - 体の力を抜く
肩が上がっていたり、拳を握りしめていたりしませんか?
意識的に力を抜き、楽な姿勢をとります。 - 視線をコントロールする
相手を睨みつけるのではなく、少し視線をずらしたり、遠くを見たりするようにします。
目を細めるのも効果的です。 - 手のひらの汗を拭く
ハンカチなどでそっと汗を拭くだけでも、気持ちが落ち着くことがあります。
これらの行動は、副交感神経を優位にし、「今は危険な状態ではない」と脳に信号を送る効果があります。
② 「意識」を対象に向ける|意識コントロール
身体がリラックスしてきたら、次は意識の向け方をコントロールします。
相手の言葉の内容そのものに囚われるのではなく、相手自身や状況を客観的に観察するように努めます。
- 相手の言動を分析する
「感情的になると声が大きくなるタイプだな」
「語彙が少ないな」
「なぜこの人はこんなに怒っているのだろう?」
と、冷静に分析・観察します。 - 相手を「観察対象」として捉える
「今日のネクタイは派手だな」
「眉毛の形が特徴的だ」
「爪が綺麗に手入れされているな」
など、相手の外見や言葉以外の部分に意識を向けます。 - 心の中で実況中継する
「おっと、今、声が裏返ったぞ」
「腕組みをして、防御姿勢に入ったな」
のように、状況を心の中で描写します。
このように、相手の挑発的な言葉の「意味」から意識をそらし、対象物として観察することで、感情的な反応を切り離し、冷静さを保ちやすくなります。
体験談:35歳・男性・会社員
以前、取引先の担当者(男性・40代)から、こちらのミスではないことで理不尽なクレームを受けたことがありました。
かなり感情的な口調で、一方的に非難され、正直、腹立たしい気持ちでいっぱいになりました。
瞬間的に言い返したくなりましたが、ぐっとこらえ、まずは意識的にゆっくり深呼吸をしました。
そして、相手の言葉の内容は右から左へ流すように努めながら、
「この人、顔を真っ赤にして怒っているな」
「机を指で叩く癖があるんだな」
「Yシャツの襟が少し汚れているな…」
と、相手の外見や仕草を冷静に観察することに集中しました。
そうしているうちに、自分の怒りの感情が少しずつ収まっていくのを感じました。
相手が一方的に話し終えた後、私は落ち着いたトーンで「お気持ちは理解いたしました。
ただ、事実関係を確認させていただきたい点がいくつかございますので、少々お時間をいただけますでしょうか」と対応することができました。
感情的に反論していたら、きっと取引自体が危うくなっていたと思います。
冷静さを保つことの重要性を痛感した出来事です。
【最も重要な心構え】苦手な相手にも「一つ」の良い点を見つける
ここまで具体的な3つのステップをお伝えしてきましたが、根底にある最も重要な心構えは、苦手な相手の中にも、必ず「一つ」は良い点や尊敬できる点を見つけようとすることです。
人は一度「嫌い」というレッテルを貼ってしまうと、その人の欠点ばかりが目につき、良い面を見ようとしなくなります。
しかし、それでは関係は悪化の一途をたどるだけです。
- 仕事のスキルが高い
- 特定の分野に非常に詳しい
- 責任感が強い
- ユーモアのセンスがある
- 家族を大切にしている
どんな些細なことでも構いません。
その「一つ」の良い点を見つけ、そこを切り口にコミュニケーションを図ることで、相手の自尊心を満たし、プライドを傷つけずに会話を進めることができます。
「どうしても好きになれない」
「良い点なんて見つからない」
という相手であれば、割り切って「この人のこのスキルを利用させてもらおう」くらいの気持ちで接するのも一つの手です。
大切なのは、感情的に拒絶するのではなく、戦略的に相手のポジティブな側面(利用価値でもOK)に目を向け、関係性をコントロールしようと意識することです。
まとめ|意識を変えれば、コミュニケーションは楽になる
苦手な人とのコミュニケーションは、誰にとってもエネルギーを使うものです。
しかし、今回ご紹介した3つのステップ、
- 相手の承認欲求を満たすアプローチ(関係改善)
- 対立を避けて意見を伝える「イエス・アンド」話法(上手な反論)
- 冷静さを保つ感情コントロール術(挑発への対処)
を意識し、実践することで、コミュニケーションのストレスは確実に軽減できます。
そして、その根底には、相手の良い点(あるいは利用できる点)を見つけようとする視点を持つことが大切です。
完璧にこなす必要はありません。
まずはできそうなことから一つずつ試してみてください。
少しの工夫と意識の変化で、苦手な人との関係性が驚くほどスムーズになる可能性があります。
この記事が、あなたの人間関係の悩みを少しでも軽くすることができれば幸いです。
別記事では、「仕事も人間関係もスムーズになるコミュニケーション術」も紹介しています。
気になる方は、ぜひチェックしてみてください!
↓
参考外部リンク
- アンガーマネジメントについて:怒りの感情と上手に付き合う方法を学ぶ
- 一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会:アンガーマネジメントとは
- URL: https://www.angermanagement.co.jp/about
- 概要:日本におけるアンガーマネジメントの普及団体による、アンガーマネジメントの基本的な考え方や定義を解説しているページです。専門機関の情報として参考になります。
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