仕事が伝わる人は数字で話す|人員不足を説明できなかった僕が学んだこと

ビジネス

数字で話す目的は、自分を賢く見せることではありません。
曖昧な困りごとを、相手が判断できる情報に変えることです。
僕は以前、「人が足りない」と何度訴えても、上司を動かせませんでした。

ところが、人数や作業時間を数字で調べてみると、本当の問題は人員不足ではなく、作業効率にあることが分かったのです。

この記事では、数字を使えなかった僕の失敗談をもとに、数字が仕事の会話を変える理由と、今日から数字に置き換えたい3つの言葉を紹介します。

数字を使えなかった僕の提案が、上司に伝わらなかった理由

今思えば、以前の僕は抽象的な言葉ばかり使っていました。
例えば、次のような言葉です。

「納期に対して、かなり遅れている」
「作業が、けっこう改善された」
「あと少しで終わる」

これらの言葉には、明確な基準がありません。
「かなり」「けっこう」「あと少し」の程度は、人によって異なります。
話す側と聞く側が、まったく違う状況を想像している可能性もあるのです。

一方で、

「納期から1日遅れている」
1日あたり0.5時間短縮できた」
「残り2件なので、18時30分に終わる見込み」

と数字を使えば、状況が具体的に伝わります。

当時、僕が職場で何度も口にしていた言葉がありました。

残業が続いているので、人が足りません。人を増やしてください。

メンバーが全員出勤しても、毎日のように残業が発生していました。
働く人たちも疲れていたため、僕は何とか職場を変えたいと思い、上司へ繰り返し相談しました。

しかし、上司はなかなか動いてくれません。
取り合ってもらえないというより、僕の話に納得していないような様子でした。

後日、メンバーの一人が体調不良で急に休み、残業時間がさらに延びた日がありました。
僕はもう一度、上司へ訴えます。

人が足りません。人を入れてください。

すると、上司からこう聞かれました。

具体的に、何人足りないんですか?

僕は答えられませんでした。

人が足りないとは感じていたものの、具体的に何人足りないのかは、自分でも分かっていなかったからです。
必要人数を計算する方法も知らず、「分かりません」と答えるしかありませんでした。

そこで初めて気づきました。

上司も、必要な人数とその根拠が分からなければ、判断できません。
その根拠を示すことが、現場の状況を知っている僕の役割だったのです。

職場のことを考えて伝えているつもりでしたが、上司から見れば、感情的に「人を増やしてほしい」と訴えているだけに見えたかもしれません。

とても恥ずかしい経験でした。

同時に、「伝え方を変えなければならない」と強く感じた出来事でもあります。

数字で調べたら、人員不足ではなく作業効率が問題だった

それから僕は、具体的に何人足りないのかを数字で示すため、職場の状況を調べ始めました。
確認したのは、主に次のような内容です。

  • 現在の作業人数
  • 1日の仕事量
  • 1人あたりの処理能力
  • 各作業にかかる時間
  • 定時内に仕事を終えるために必要な人数

さまざまなものを数字にしていくと、これまで感覚でしか見ていなかった職場の実態が、少しずつ見えるようになりました。

当時は5人全員が毎日約1時間残業しており、職場全体では1日約5人時の超過が発生していました。
※「人時」とは、1人が1時間働く仕事量を表す単位です。

僕は、この5人時を見て、単純に「1人増やせば解決する」と考えていました。

しかし、作業時間を調べてみると、そのうち約3人時は、特定の工程で発生していた待ち時間でした。

さらに、

  • 作業の順番を入れ替える
  • 人員配置を見直す
  • 作業の開始時間を変更する

といった改善によって、残りの約2人時も削減できました。

問題は、人が足りないことではなかったのです。
5人が持っている時間を、効率よく作業に使えていないことが原因でした。

その後は、人員の追加ではなく、作業効率の改善に力を入れました。
結果として、定時を基準に仕事を終えられる状態へ近づけることができました。

もし、十分な根拠がないまま1人増やしていたら、必要のない人件費が発生していた可能性があります。
上司がすぐに人を補充しなかった判断は、結果的に間違っていませんでした。

数字を調べたことで、感覚だけでは見えなかった本当の原因に気づけたのです。

数字が仕事の会話を変える3つの理由

数字を使うと、仕事の会話は大きく変わります。
僕が実感している理由は、次の3つです。

1.人による認識のズレを減らせる

以前、部下に「どのくらい残業する予定?」と聞いたことがありました。
すると、

あと少しで終わります。

という返事が返ってきました。
僕が想像した「あと少し」は、30分ほどです。

しかし、30分経っても、1時間経っても、仕事は終わりませんでした。

後日確認すると、その日の残業は1時間30分だったそうです。
日常的に残業している部下にとって、1時間30分は「少し」だったのかもしれません。

これは、僕の聞き方にも問題がありました。
「どのくらい残業する?」ではなく、

残っている作業は何件で、終了予定は何時ですか?

と聞くべきだったのです。

部下も、

残りの作業は3件で、終了予定は19時です。

と答えれば、認識のズレは起こりにくくなります。

数字を使うと、会話の基準を共有しやすくなります。
最初から具体的に伝え合えば、余計な疑問やストレスも減らせます。

2.相手が判断しやすくなる

具体的な数字は、相手が考える時間を減らしてくれます。
反対に、抽象的な表現では、

「どのくらい?」
「いつまで?」
「何個必要なの?」

と、相手が聞き返さなければなりません。

例えば、職場のウォーターサーバー用の水が不足したことがありました。
発注担当者が必要な数量を確認したところ、僕の部下は、

これから暑くなるので、たくさん頼んでおけばいいと思います。

と答えました。

しかし、実際に届いたのは、いつもと同じ数量でした。
発注担当者と部下では、「たくさん」の基準が違っていたのです。

これを数字にすると、次のようになります。

現在は週20本ですが、使用量が約1.5倍に増えているため、次回は30本発注してください。

これなら、発注担当者は迷わずに判断できます。

数字で話すときは、数字だけでなく、期間や単位も一緒に伝えることが大切です。

3.次に何をすべきかが明確になる

数字を使うと、現状と目標との差が見えます。
その差が分かれば、次に必要な行動も考えやすくなります。

僕が働く物流現場には、荷物を配達先ごとに分ける仕分け作業があります。
以前は、その日に処理すべき仕分け量が十分に共有されておらず、気づいたときには定時内に終わらない、ということがありました。

例えば、残りの仕分け量が1,000箱で、定時まで残り1時間だとします。
現在は2人で作業しており、1人あたり1時間に250箱を処理できます。

つまり、2人では1時間に500箱しか処理できません。

定時までに1,000箱を終えるには、さらに500箱分の処理能力が必要です。
作業スペースや設備に問題がなければ、同じ処理能力を持つ作業者を2人応援に入れることで、

4人×250箱=1,000箱

となり、計算上は定時までに完了できます。
「かなり作業が残っています」と伝えるだけでは、状況報告で終わります。

しかし、残り時間や処理能力を数字にすれば、必要な応援人数まで考えられるのです。

数字を出すだけでは、仕事は改善しない

ここまで読んで、

数字を出せばいいんだな。

と思った人もいるかもしれません。

しかし、数字を出すだけでは、問題は解決しません。

例えば、

この作業に2時間かかった。

という数字を記録したとします。
これだけでは、単なる作業記録です。

改善につなげるには、もう一歩踏み込む必要があります。

  • 目標時間は何時間だったのか
  • なぜ2時間かかったのか
  • どの工程に時間がかかったのか
  • 次は何を変えれば短縮できるのか

ここまで考えて、初めて数字が改善に使われます。
数字は、答えではありません。

問題を見つけて、次の行動を決めるための材料です。

数字を出したのに何も改善しない場合は、その数字を見て「次に何を変えるのか」まで考えられているか、確認してみてください。

今日から数字に変えたい3つの言葉

ここまで読んで、

自分も抽象的な言葉ばかり使っているかもしれない。

と感じた人もいるでしょう。
まずは、日常的に使いやすい次の3つの言葉を、数字へ置き換えてみてください。

1.「たくさん」ではなく「何件・何個」

「たくさん」「いっぱい」という言葉では、具体的な量が分かりません。

変更前

問い合わせがたくさん来ています。

変更後

昨日から問い合わせが12件来ています。

量が分かれば、応援が必要なのか、いつまでに対応できそうかも考えやすくなります。

2.「あと少し」ではなく「何分・何時」

「あと少しで終わる」と言われても、その「少し」が10分なのか1時間なのか分かりません。

変更前

あと少しで終わります。

変更後

残り2件なので、18時30分に終わる見込みです。

残り件数と終了予定時刻を伝えれば、相手も次の予定を立てやすくなります。

3.「人が足りない」ではなく「何人・何時間」

職場を何とかしたいという気持ちが強い人ほど、「人が足りない」と訴えたくなるかもしれません。
しかし、まずは不足している仕事量を数字で確認することが大切です。

変更前

人が足りません。

変更後

1人が1日8時間作業する前提で、毎日8人時分の仕事が残っています。現在は、1人分の工数が不足しています。

ただし、8人時分の仕事が残っているからといって、必ず1人増やすべきとは限りません。
待ち時間や作業手順に問題がないかを確認したうえで、人員を増やすのか、作業を改善するのかを判断します。

数字で話すとは、相手が判断できる状態を作ること

数字で話すことは、自分のためだけではありません。
相手が状況を理解し、判断しやすくするためでもあります。

例えば、あなたが上司だとして、部下から次のように言われたらどう感じるでしょうか。

今日は、けっこう残業になりそうです。

多くの人は、

具体的に、どのくらい?

と思うはずです。

一方で、次のように伝えられたらどうでしょうか。

本日は2時間残業しても、僕一人で1時間かかる作業が残る見込みです。明日の通常業務は7時間分なので、残った1時間分を加えても、合計8時間で定時内に完了できます。そのため、本日は2時間で作業を切り上げ、残りを明日に回したいと考えています。

これなら、上司は次の点をすぐに判断できます。

  • 今日どのくらい残業するのか
  • どのくらい仕事が残るのか
  • 明日に回しても問題ないのか
  • 部下は最終的にどうしたいのか

数字とは、相手に判断材料を渡すためのものです。

勘違いしてほしくないのは、数字を使っているから優秀なのではありません。
自分を賢く見せるために、難しい数字を並べる必要もありません。

大切なのは、相手がすぐに判断できる状態を作ることです。
正確な数字を出せない場合は、概算でも構いません。

その場合は、

現時点での概算ですが
過去3日間の実績をもとにすると
この条件で計算すると

など、数字の前提も一緒に伝えます。

さらに、数字を出したあとに、原因と自分の提案まで添えられれば、より伝わりやすくなります。

現在は、この数字です。
原因は、これだと考えています。
そのため、僕はこうしたいです。

ここまで伝えることで、単なる不満や報告ではなく、相手が判断できる提案になります。

数字で話すとは、賢く見せることではありません。
曖昧な困りごとを、相手が判断できる情報へ変えることです。

仕事の中で「かなり」「たくさん」「あと少し」と言いそうになったときは、一度立ち止まってみてください。
その言葉を数字に変えるだけで、あなたの仕事は今より伝わりやすくなるはずです。


仕事ができる人に関しては、こちらの記事でも紹介しています!ぜひチェックしてみてください!

参考になれば嬉しいです!

数字を味方につけることで、仕事の進め方が変わり、成果を上げるスピードも飛躍的に向上します!

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